今回からは具体的な中学生の数学の勉強法をお伝えします。
その1では、まず特に数学が苦手な生徒さん向けです。
具体的には文章題はもちろんのこと、計算も自信がない中学生向けで、学年はあまり関係なくお伝えします。
学年を問わず、数学の成績(学年順位)の目安としては下位3分の1くらいの成績の中学生で、九九と簡単な割り算はできることが前提です。
中学生の数学の勉強法その1の概要
計算が苦手ということは計算力がまだ育っていない中学生なので、伸ばすのに時間がかかる記憶力をほとんど使わないことはもちろんのこと、計算力がまだ乏しくても、簡単な計算でできる計算問題と簡単な計算でできる文章題(こちらは計算が簡単なだけで問題としての難易度は高いものも含みます)ができるようにするための勉強法です。
つまり、計算自体が複雑でなければ(小数や分数を使わない)中学生の計算問題は意外と簡単で点数が取れるという実感と、計算が苦手でも、そして数学が苦手でも難しいとされる文章題も意外と簡単に解けるということを実感してもらうとともに100点満点中60~70点を取れることを目標とします。
計算さえも自信がなかった中学生が60~70点取れれば自信がつくと思いませんか?
さらに成績が良く、数学が割と得意な子でも難しいと思う(あるいはできない)文章題ができることも自信につながりますね。
この2つで自信をつけてもらい数学が嫌いでなくなる(少し「おもしろい」と思える)ようになることが目的です。
このくらいの成績の中学生の特徴
数学は計算力と思考力があれば高得点が取れる教科ですが、このくらいの成績の中学生は計算力も思考力もまだまったく伸びていないのが特徴です。
とすれば、計算力をほとんど使わないこと。思考力もほとんど使わないこと。これが大前提となります。
しかし、あらかじめ言っておきますが、誤解をしないで下さい。
思考力(考える力)を使わない代わりに記憶力を使って「解き方を覚える」という勉強法ではありません。この成績の中学生のもう1つの特徴として記憶力もまったく伸びていない場合がほとんどですし、数学の問題を記憶力で解くことは思考力が伸ばせなくなる原因にもなってしまいますので。
中学生の数学を勉強をする上での前提事項
中学生の数学は思考力を伸ばすことが第一目的のため、基本的に計算は簡単な計算で済む問題が多いです。
先に準備編でお伝えしたように、あえて無駄に難しい計算をさせることも確かですが、そのような計算問題はまだできなくても構いません。それでもできる問題がたくさんあるからです。
思考力を伸ばすための非常に重要なこと
この成績の中学生は思考力もまったく育っていない状態とは言いましたが、その状態であっても思考力を伸ばすことは意外と簡単です。
その方法は、あえて考えないことなのです。
あえて考えることをしないことで、不思議に思われるかもしれませんが、実は意外と簡単に思考力が伸びるのです。
理解力と思考力の不思議な関係
思考力だけを伸ばそうと思うと実は結構難しいです。
今までにお伝えしたことと矛盾するように思えるでしょうが事実です。
思考力に着眼して思考力を伸ばそうとすると特に思考力がまだ育っていない中学生の思考力を伸ばすのはかなり難しいです。
しかし、思考力が伸びていない中学生であっても、理解させること(わかったつもりでもいいので)はそれほど難しくありません。
ここがポイントなのです。
何度も「わかった!」(わかったつもりでもいいので)を繰り返すことで意外と簡単に理解力は伸ばすことが可能です。
そしてここが不思議な事実なのですが、理解力に着眼して理解力を伸ばせば、思考力も自然と伸びるのです。
つまり、「わかった」を繰り返しているうちに、最初は考えられなくても、すぐに自分で考えられるようにもなる(すなわち思考力も伸びる)ものなのです。
これは多くの中学生で実証済みのことで、あえて理屈を伝えるならば、たとえば上腕二頭筋(腕を曲げると力こぶになる部分の筋肉です)を鍛えようとダンベルを使って筋トレをしたとしましょう。
そうすると上腕二頭筋を鍛えるつもりでも、重いダンベルを持つわけですから自然と握力や肩の筋肉、背中の筋肉まで鍛えられてしまいますね。その現象に似ています。
中学生の数学の勉強法その1具体的な勉強法
さて、以上を踏まえて、ここからは具体的な数学の勉強法についてお伝えしていきます。
ただし、成績によってはこの勉強法を理解し共感してくれる指導者(親御さんでも構いません)が必要になるかもしれません。(これについては後ほどまた説明します)
また、この勉強法では問題集が必要ですが、問題集を選ぶポイントは解答の「解説が詳しいもの」です。
そして、もう1つの問題集選びのポイントは学年を問わず1年生から3年生までの問題が1冊にまとまった問題集が良いでしょう。
書店で普通に販売されている問題集の中では、私が今まで見た限りでは文理の1年から3年生用数学の「完全攻略」という問題集(ふつうは3年生が使う受験対策用問題集です)がおすすめです。
よく似た問題集で以下の問題集もありますが、成績がまだ良くない今回の対象になっているくらいの順位の中学生は上のほうが若干良いかもしれません。
こちらのほうが若干価格が安く、私は普段こちらをおすすめしていますが、ポイントの説明ページが上のものよりも簡素なので(上のものはカラーページを使って若干丁寧に説明されています)指導してくれる方がいる場合や順位が下位3分の1でもその中では比較的上位の中学生はこちらのほうでも良いでしょう。
いずれもアマゾンでも購入可能(上の画像をクリックしてアマゾンで購入も可能)です。
文理の問題集に限らず、学年に合わせて問題集を選ぶのではなくあえて3年分の問題集を選ぶ理由は問題数がその分少なく厳選されているからです。
よほどやる気のある生徒でなければあまり多くの問題は解けませんし、そもそも私がお伝えする勉強法ではそれほど多くの問題を解く必要もありませんので、このような問題集がおすすめなのです。
と言いますか、数学が苦手な中学生はできるだけ少ない勉強で成績アップしたいですからね。
数学で成績アップをするための準備的な勉強法(第1段階)
さて、早速問題集を使って勉強をしていきましょう。
しかし、この第1段階は中学生の数学の成績によっては不要になる生徒さんもいると思います。
第1段階の狙いは最低限必要な計算問題ができるようになること
最低限必要とは、簡単な四則計算(足し算、引き算、掛け算、割り算)だけでできて、小数や分数を使わない計算問題であり、尚且つ、方程式などの文章題で立式ができた際にそれを答えまで出せるようにするだけの計算ができるようにするということです。
以前にもお伝えした通り、方程式やいろいろな単元での文章題は立式することが難しい問題ですから、立式できてしまえば、その式を解くための計算は意外と簡単です。
従ってその「意外と簡単な計算」くらいはこの第1段階でできるようにしておくわけです。
ここから先は、学年や現在の時期(この記事は2019年6月26日に書いていますが、あなたが読まれる時は何月かわかりませんので)、によってやるべきことが少しだけ変わります。
ですので、現在はあなたが中学2年生だとして、数学は連立方程式を習っているとします。(現在の学習指導要領では2年生の5月から6月くらいに習います)
また、あなたは数学が非常に苦手で、中学2年生の範囲はおろか中学1年生の計算問題も自信がないとしましょう。
その状態でまずやるべきこと
中学1年生の一番最初、正の数・負の数まで戻って計算問題をやることです。
ですが、たぶんこの言葉を聞いてあなたがイメージした方法とは違います。
世間で言われる過去に遡って勉強をやるという方法よりもずいぶんと簡単です。
その証拠に、正の数・負の数まで戻って中学2年生の連立方程式の前まで勉強をするのに、今回対象になっている成績順位の子であっても早い子で1日、遅い子でも数日で終わりますから。
具体的には各単元で簡単な計算問題を2~3問のみ解いてみて、ふつうに解ければすぐに次に進みます。
他の問題は差し当たり解きません。
簡単な問題とは?
私がおすすめした文理の問題集に限らず、およそ問題集というものは各単元で各項目ごとに簡単な問題から順に難しい問題へと問題が並んでいますね。
たとえば、正の数・負の数の最初のページを見開きで2ページ開いた時、左上の問題は最も簡単で、右下の問題は最も難しいように作られています。(若干の順番の前後はありますが)
なので、左上にある計算問題を2~3問だけ計算して解いてみれば良いだけです。
ただし、解くのはあくまでも計算問題です。
たとえば正の数・負の数の場合、左上には計算問題ではなく「小さい順に左から並べる」というような問題になっていることもありますので、その場合はその下にある計算問題です。
(-7)+(-5)
(+4)+(-8)
(-3)-(-6)
のような問題ができればOKということです。
これができるなら、足し算引き算はOKなので、正の数・負の数の掛け算と割り算に進むわけです。
次でも2~3問やってみるだけで十分です。
要するに、確認作業です。
自分もこれくらいの問題なら解けるなと確認できれば(多少の自信になれば)それで十分です。
ただし、これくらいでも出来ない場合は、問題集の問題前にある説明部分を読んで理解する必要はありますが。
そして、これくらいで躓く場合は指導者がいたほうが効率は良いでしょう。
こんな感じで正の数・負の数の部分が終われば、次は「文字と式」の単元でも同じようにやります。
次の1次方程式も簡単な計算問題のみ同じようにやって下さい。
比例と反比例の単元は差し当たり不要。図形の部分も不要です。
1次方程式が終わったら次は2年生の式の計算で同じように計算問題のみやって下さい。
以上で、次は連立方程式ですから連立方程式の前までの復習は完了です!
もちろんこの程度で完璧とは程遠いですが、差し当たり連立方程式を解く基本はできるはずですから、足らない部分は後から、つまり、多少できるようになって数学で成績も上がり、欲が出てからで十分です。欲が出てからのほうがより効率よく不足分を補えます。
数学で成績アップをするための勉強法(第2段階)
さて、いよいよ今習っている連立方程式をやります。
連立方程式ができるようになるのを目指すわけですが、目標は連立方程式のテストで60点~70点が取れるくらいです。
つまり、それくらいになれば、数学は割と得意な教科になるでしょう。
定期テストでも数学では70点くらいが取れるようになります。
具体的な勉強法その1
まずはここ(連立方程式)でも簡単な計算問題を数問やって下さい。
要するに加減法と代入法の簡単な計算問題ができれば十分ということです。
簡単な計算問題が解ければ、連立方程式の形がわかりますから、文章題をやる際にも見た目がどんな式を作れば良いかわかりやすいですね。
そのための下準備に過ぎません。
肝心な勉強はこれからです。
ここまでの段階でまだ計算に自信がなくても構いません。
具体的な勉強法その2
ここからが成績アップの要となる勉強法です。
連立方程式の文章題で、わりと簡単な文章題にチャレンジしましょう。
わりと簡単な文章題とは距離や時間・速度の問題や何割・何%という言葉が入っていない文章題のことで、これもまた問題集では文章題の最初のほうにある文章題です。
まず問題文を読み、30秒から1分だけは考えてみます。
この時間は正確に計る必要はありませんし、たぶん今回対象になっている順位の中学生には簡単な文章題も難しいと思いますので、できなくて当たり前です。
逆に出来そうと思ったらもう少し時間を取ってやってみて下さい。
それでできれば自信につながりますので。(時々ここで出来てしまう子も現れます)
できなくて当たり前というつもりで取り組めば良いのですが、多少なりとも1年生からの復習をしたので、意外と出来てしまうこともあり、できたらできたで自信を持てば良いでしょう。できた人はもう少し難しい問題に同じようにチャレンジしてみて下さい。
わからなかったらすぐに考えることをあきらめて解答を見ましょう。
これがポイントです。
わからない問題を長い時間をかけて考えていても結局わかりません。
そのうちに考えること自体が嫌になるのがオチです。
ですので、いったん考えることをあきらめて解答の解説を読んで理解することに専念します。
解答の解説を読む際のポイントは3つです。
- 式の立て方(立式まで)を理解すること(わかるようにすること)
- なんとなくでもわかればOK(わかったつもりでもOK)。
- ここでは理解することが重要で決して覚えようとしないこと
この3つです。
そしてなんとなくでも良いのでわかったら、立式された式が解答には書かれていますので、その式(連立方程式)は自分で解いてみましょう。
この式(連立方程式)が解ければ、自分(中学生)も式さえできれば答えは出せると実感できますので。
ここで解説を読んでもまったくわからない場合は指導者が必要でしょう。
また非常に重要なポイントは特に3つ目です。覚えようとしないことです。
重要なのでもう1度念をおして言っておきます。
解き方は理解するだけで覚えないこと
これを覚えてしまったら数学を暗記教科にしてしまいます。
それでは意味がありませんので、理解すること(わかること)に専念して下さい。
時々塾などでは解き方を覚えるように指導することがありますが、それはやめて下さい。
たしかに覚えたほうがテストの点数アップという点では即効性がありますが、この勉強法の目的は理解力を鍛えることで自然と考える力である思考力も伸ばすことなので、覚えてしまっては意味がありません。
もちろん覚えようとしなくても覚えてしまうのは仕方がないので構いません。
後はこの要領で文章題を解こうとして、たぶん解けないでしょうから、解説を読んで理解することを繰り返して下さい。
この勉強法のポイントのまとめ
まだ計算力も乏しい生徒が対象ではありますが、文章題を解けば必ずその後に計算をします。
そうすれば自然と計算力は少しずつですが身につきます。
逆に無駄に難しい計算に取り組んで挫折する心配もありません。
もちろんテストでは無駄に難しい計算問題も出題されますが、そのような計算問題ができなくても文章題ができるようになってその分を点数が上乗せできれば十分です。
解説を読んで理解することを繰り返しているうちに、理解力が身についてきますので(これは比較的早いです。早い子はその日のうちに、遅くても数日で必要最低限は身につきます)すると自然と考える力も育っていくのです。
この理解力と思考力を伸ばすことが最大の目的です。
なぜなら、連立方程式で理解力と思考力がある程度伸びれば、次の1次関数ではふつうに数学ができるようになるからです。
ここまでできるようになるのに早い子は数日、遅い子でも1週間程度で2週間はかからないでしょう。
連立方程式の単元テストならば70点くらいは取れるようになりますし、2年生の1学期の期末テストでも同じくらいの点数を取ることは可能になってきます。
この時点ではまだ小数や分数の計算、複雑な計算問題はたぶん解けません。
ですが、70点ならば上位3分の1に入れそうな点数ですよね。
それだけの点数が取れた。わかるようになった。という実感や実績が自信につながります。
欲が出てくる中学生も多いですから、そうなってから分数の計算や小数の掛け算割り算ができるようにすれば良いですね。
数学の勉強法は基本的に以上の通りで、後は学年や時期によって若干の変更をするだけです。
そのあたりの補足説明は後日致します。
指導者について
既に家庭教師がいるのでしたらその人に頼んでも良いと思いますが、その方にも必ず私のブログを読ませて内容を納得してもらって下さい。
家庭教師がいない場合は親御さんが家庭教師代わりになることをおすすめします。
「無理。ムリ! 私には教えられない」というように思われる方も、是非1度試してみて下さい。
無理だと言われる方は中学生の頃に数学が苦手だった方だと思いますが、大人になってから解いてみると意外と簡単にわかったりします。
それはなぜでしょうか?
以前からお伝えしている通り、数学は理解力と思考力を鍛えるための教科です。
そしてあなたは中学生の頃は数学が苦手だったかもしれませんが、大人になるにあたり、どんな職業(あるいは無職でも)どんな経験をしてきたにしても、いろいろなことを考えて今に至っていますので、必ず中学生の頃よりは理解力も思考力も伸びているはずです。
だから、中学の頃に苦手だった数学でも理解できてできるようになっているのです。
数学が苦手だった親御さんほど、自分が苦手だったことをお子様に伝えた上で、一緒に頑張ろうというスタンスで一緒に勉強をされると、その親の姿が子供にとっての刺激になったり、親は親で子供のために一生懸命頑張ると意外と簡単に理解できて子供に教えることができるようになるものですよ。
もちろん、あらかじめ予習をする必要もありません。
お子様(中学生)と一緒に上記の勉強をやってみて、文章題も最初はできないかもしれませんが、解説を読めばお子様が理解できなくてもあなたは理解できると思います。
あなたが理解できたのならば、それを教えてあげれば良いだけです。
計算問題の場合も同じです。
わからなかったらお子様と一緒にわかるように説明を読んだりすれば、あなたのほうが先にわかると思いますから、わかった時点で教えてあげれば良いだけです。
このような親子のコミュニケーションは意外と貴重ですよ。
中学生の勉強だからこそできることです。
高校になったら勉強自体が難しくなりますし、お子様も大人になっていきますからこのようなコミュニケーション自体が難しくなります。
今がラストチャンスかもしれません。
今回の記事はより一層長文ですが、重要ですから何度か読み返して理解して頂けると良いかと思います。